ここ5年間ほどで、全国にあるシェアハウスの数は10倍にまで増えたとも言われています。
最近ではおしゃれなデザイナーマンションのシェアハウスなども増え始め、形態もどんどん変化しながら、現在進行形で着実に数を増やし続けています。
また、シェアハウスのオーナーになることで、毎月家賃収入が得られるため、投資用不動産としても人気があります。
そんな話題のシェアハウスですが、2018年頃〜現在も未解決の「かぼちゃの馬車事件」をご存知でしょうか?
もしシェアハウスの投資に興味があるなら、こちらの記事を読んでから、見極めて投資した方が良さそうです。
かぼちゃの馬車事件とは?わかりやすく解説
まずはその「かぼちゃの馬車事件」についてわかりやすく解説していきます。
「かぼちゃの馬車事件をはじめて聞いた」という方は、じっくりと読んでみてくださいね。
女性専用シェアハウス物件のブランド名
「かぼちゃの馬車」とは、女性専用シェアハウスとして株式会社スマートデイズ(当時の商号は株式会社スマートライフ)が2014年に立ち上げたブランドです。
「初期費用0円」や「女性限定」などの条件で、上京してくる女性たちをターゲットとして都内に多くの棟が建てられました。
スマートデイズは次から次へとかぼちゃの馬車を建てていき、その数なんと約800棟、部屋数は1万室に!

地方から上京する女性は、他にもいろいろお金がかかるから、引っ越し費用は安く済ませたいよね。だから初期費用や家賃が格安なシェアハウスを住居に選ぶ女性も多いみたい。
家賃保証型のサブリース事業
女性用シェアハウス・かぼちゃの馬車を建てたスマートデイズは、このシェアハウスを投資用不動産として売り出し始めました。
売り出し時には、
- 家賃保証型のサブリース、利回りはなんと8%!
- 30年間家賃保証
- 頭金なしで投資OK
などと謳い、高収入のサラリーマンなどをターゲットにセミナーを繰り返し行って、800人近くのオーナーを集めました。

都内の新築アパートで利回り8%なんて高すぎてありえない!しかも30年の家賃保証、投資の頭金もいらないなんて、多くの人が食いつく、一見オイシイ投資用不動産だよね。
運営会社スマートデイズの破綻による自己破産
しかし、現実はそううまく行きませんでした。
物件はどれも駅から遠く、さらに1部屋なんと7平米(約4.5畳)といった狭さに加え、シェアハウスの醍醐味であるルームメイトが集まるリビングもなし、トイレとシャワーのみが共有という条件で、入居者が見つからなかったのです。
資金繰りに困ったスマートデイズは2018年4月9日、東京地方裁判所に民事再生法の適用を申請し、5月15日に破産手続開始決定を受けました。
スマートデイズが自己破産したことにより、30年の家賃保証はにもちろん払われず、オーナーたちも苦しむことに。
中には自己破産したオーナーもいたそうです。

シェアハウスって、入居者同士の交流が最大のメリットなんじゃないの!?
それに、信じられない部屋の狭さね。駅からも遠いし、それじゃ入居者が決まるわけないわよね〜。
かぼちゃの馬車の問題とは?
かぼちゃの馬車事件について、概要はわかっていただけましたか?
ここまで紹介したことの他にも、かぼちゃの馬車事件にはかなりまずい問題がありました。
建築会社からの異常に高いキックバック
かぼちゃの馬車を一括借上げしていたスマートデイズの資金源は家賃収入のはずですが、入居者がいないと家賃収入ももちろんありませんよね。
では、その資金源はどこからきていたのでしょう?
それは、建設会社からの高すぎるキックバックに多くありました。
実際には5000万円以下で建てられるシェアハウスを、倍の1億円でオーナーに売りつけ、建設会社からキックバックをもらい、それを資金とし、オーナーに毎月のサブリース代を支払い続けていました。

これって詐欺と言われても仕方ない行為じゃないの?建設会社は儲かるだけだから、もちろんこの話に乗っかるわよね。1億円で買って実際の価値は半分以下…自己破産するオーナーが出るわけね。
スルガ銀行のずさんな融資
そのオーナーたちにローンを組ませていたのが、スルガ銀行です。
貯金がないオーナーたちの融資に必要な書類を、なんとスルガ銀行側がまるで貯金があるように改ざんして、ローンの審査を通していたのです。
しかし、スルガ銀行が突然ルールを変更、かぼちゃの馬車のオーナーたちのローン審査は通らなくなりました。
スルガ銀行のルール変更後、たった2ヶ月でスマートデイズは破綻に追い込まれていきます。
かぼちゃの馬車の被害者オーナーのその後
さて、ここで1番の被害者は、詐欺まがいの投資をさせられた800人近くのオーナーたちです。
中には自己破産したオーナーもいたようですが、その後はどうなったのでしょう。
2019年に被害弁護団が調停申し立て
2019年9月、通称SS被弁護団(スマートデイズ・スルガ銀行)は、スルガ銀行に早期解決を求める調停を東京地裁に申し立てました。
これを受けて東京地裁が解決への勧告を行い、債権譲渡と代物弁済のスキームを前提に投資家など三者間で詰めの作業を進めます。
そのスキームがこちら。
- スルガ銀行と被害者オーナーにて借入債務と解決金を対当額で相殺処理
- スルガ銀行は相殺後の債権を譲渡先へ譲渡
- 被害者オーナーは譲渡先に該当物件を2で譲渡された債権の支払に代えて代物弁済
引用元:スルガ銀行・スマートデイズ被害弁護団の公式サイト~被害者の完全救済を目指しています~
2020年3月期決算で、スルガ銀行はこのスキーム実行に伴う約89億円の貸倒引当金戻入益を計上。
そうしてSS被害者弁護団は、2回にわたり合計691物件の完全代物弁済を解決しました。
現在も被害者弁護団は、未解決の物件を持っているオーナーに説明会などを行ない、調停を進めるために活動し続けています。
借金を帳消しで被害者を救済
上で紹介したスキームの中1番で、“スルガ銀行と被害者オーナーにて借入債務と解決金を対当額で相殺処理”とありました。
これはつまり、スルガ銀行への土地と建物の物納によって、オーナーの借金を帳消しするということです。
これに至っては、「やりすぎではないのか」「スルガ銀行以外でローンを組んだ者は救済されないじゃないか」など、世間からはさまざまな声が上がっています。

被害オーナーのことを考えると借金帳消ししてあげてもいいと思うけど、確かにスルガ銀行以外でローンを組んでしまったオーナーはどうなるんだろう…。
かぼちゃの馬車の物件の現在は?
未だ続くかぼちゃの馬車事件ですが、肝心のかぼちゃの馬車は現在、どうなっているのでしょうか。
調べてみたところ、意外な方法で活用されていました。
世田谷ではグループホームとして運営
世田谷区にあったかぼちゃの馬車の物件では、もともと10部屋あったのを7部屋にリフォーム、各部屋を少し広くして、グループホームとして活用しています。
共有部には浴室を新設し、内装もおしゃれにリニューアル。
世田谷区という立地から需要もあり、収益性は上がったようです。
派遣会社として提携して労働者向けの宿舎として使用
板橋区にある物件では、派遣会社と連携して、労働者向けの宿舎として活用しています。
こちらでは部屋の広さを変えず、10部屋あった分の3部屋を潰し、広々としたリビングダイニングキッチンに改造。
2階には洗濯機置き場を設置し、警備員や引っ越し業者など日雇いや派遣で働く労働が暮らしやすいような物件と生まれ変わりました。

せっかく建てた物件、壊しちゃうのかしらと思ったら、違う形でちゃんと活用されていてよかったわ。
かぼちゃの馬車から学ぶ不動産投資の注意点
以上がかぼちゃの馬車事件についての概要とその後の話です。
この事件を教訓として、不動産投資の際にはどんなことに注意すべきなのか、チェックしてみましょう。
利回りと金利が採算性があるのか確認する
不動産投資をする際は、利回りが現実的か、金利が高すぎないかなどを必ずチェックし、採算性があるのかを計算するべきです。
新築物件で8%というあまりに高すぎる利回り、この時スルガ銀行の金利は4.5%と他社よりも高いです。
この高い金利にも、「他の銀行じゃ融資されない」「利回りがいいから大丈夫」と気にしなかったのでしょう。
しかし、最初に提案された利回りは“想定利回り”であって、築年数が落ちて物件価値が落ちてしまったりすると、その利回りを下回ることとなります。
そういったことも予想し、利回りと金利が高すぎないか、利回りが落ちたとしても、その金利で毎月の返済ができるのかなどをしっかりと見極めましょう。
入居者の見込みがあるのか予想する
今回の物件では、
- 駅から遠い
- 部屋が狭い
- シェアハウスという名なのに、リビングがない
など、冷静に見れば入居者が集まらない条件がたくさん揃っています。
不動産投資をする際は、入居者が絶えない物件を選ぶようにしましょう。
たくさんの条件がありますが、その中で例をあげると、
- 駅から近い(具体的にいうと7分以内)
- 周辺の家賃相場と比べて高すぎないか
- 外観が綺麗
などがあります。
外観は一見関係なさそうに見えますが、メンテナンスをしっかりしている物件は何年経っても古臭さが出ず、清潔感があり人気物件となっていくんですよ。
投資案件は自己責任であることを理解する
投資物件に、“絶対”はありえません。
「絶対儲かるから」「絶対大丈夫!」なんて言葉は、1番信じてはいけない言葉です。
また、投資資金がないのに投資を始めようとするのも危険です。
普通は投資資金があるから投資をするのに、無理して投資してしまうと、自分で自分の首を絞めることになります。
“投資=楽して稼げる”というイメージがあるかもしれませんが、投資で成功している方は、投資するものについてよく勉強し、見極めて、自分の責任で投資しているものです。
誰もが「楽して稼ぎたい」と思うものですが、オイシイ話ほど危険が伴うことを覚えておいてください。

オイシイ話があれば誰でも食いつきたくなっちゃうと思うわ。でも世の中そう甘くはないのよ。投資にはリスクもつきものだから、じっくり調べて考えて、判断して。
まとめ
かぼちゃの馬車事件について紹介しました。
- 「かぼちゃの馬車」は女性用シェアハウスの名前
- スルガ銀行が書類を改ざんし、多くのオーナーに融資
- 売主のスマートデイズは破綻、かぼちゃの馬車を買ったオーナーも窮地に
- 被害者弁護団が調停申し立て、事実上“借金帳消し”のスキームでスルガ銀行が合意
- かぼちゃの馬車はその後グループホームや社員宿舎として活用されている
以上がかぼちゃの馬車事件の概要でした。
これを読んだみなさんも、オイシイ投資の話には充分気をつけて、自己判断で投資をしましょう。
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